シリコンバレーでのキャリアを考えている人必読「エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢」を読んだ

私は大学院生の時、大学を通じてロサンゼルスへ行き、そこでインターンをしたり、シリコンバレーのスタートアップで話を聞いたりした経験があります。その時から、いつかまたシリコンバレーで働いてみたいなぁと思っていました。そんななかつい先日、「エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢」という本を知って読んでみたらとても面白かったので、内容の紹介や感想を書いていきたいと思います。

  • 1章:あなたはアメリカに合っているのか
  • 2章:どうやったら渡米できるか
  • 3章:アメリカ企業に就職・転職する
  • 4章:ホワイトボードコーディング面接を突破する
  • 5章:アメリカで働くと何が違うのか
  • 6章:転職を通してキャリアアップする
  • 7章:解雇に備える

ビザの取得

今日本で働いている日本人がアメリカで働きたいと思った時、まず一番最初にぶち当たる大きい壁がビザの取得です。当たり前ですが、アメリカで日本人が働くには、入国して働くためのビザが必要となります。この本を読むと、アメリカで働くためのビザにはいくつか種類があり、それぞれのビザを取得するには労力や難易度が違うことが分かります。本では4つの方法が紹介されていたので簡単に説明します。ただし、ビザの取得方法や種類は変わることがあるのでその時の最新情報はみておいた方がよいです。

留学後に現地就職

これは一番の王道パターンです。経済的・時間的問題がないのであればこれが確実にアメリカでの就職に繋がります。ただし、会社を辞めて留学するパターンでは、アメリカでの就職に失敗した場合、日本に戻っても年齢の問題で就職が難しくなるリスクはあります。これに関しては、@noralifeさんが以下のポッドキャストで実例をお話されていたので聞いてみるといいかと思います。

fukabori.fm

日本から直接雇用

これは一番ハードルが高く、運も必要な方法です。難しい理由としては2つあります。1つは面接の労力が大きい点です。アメリカ国内にたくさんの優秀なエンジニアがいるのに、わざわざ海外のエンジニアを面接する理由はあまりありません。オンサイト面接で飛行機代やその他のお金がかかったり、採用した人が文化に馴染めなかった時のリスクなどもあります。
もう1つは、採用した後のビザの問題です。H1-Bビザの枠に余裕がなければ4月にビザを申請して10月に発給されるまで半年待たなければなりません。「このチームの人員が足りないから雇いたい」という場合はまず採用されません。

ただし、それでも海外のエンジニアを雇いたい理由はあります。まず思いつくのが、応募してきたのがとても優秀なエンジニアである場合です。オープンソースに多大に貢献していて、そのネットワークを使って紹介されるケースが考えられます。ビザの問題は別途あるのですが、例えば著名な論文誌や学会の掲載実績があるなどの理由で発行されるOビザを取得できるのであれば、ビザの問題はなくなり採用される可能性があがります。
次に考えられるのが、日本人を雇いたい場合です。アメリカにありながら日本を相手にしたビジネスをしている会社や、もともと日本人が作った会社で日本人を増やしたいときなど、日本人を直接雇う場合があります。

日本で就職後に移籍

これはアメリカに本社がある外資系かアメリカに支社がある日本の会社に入社して、海外へ社内移籍するという方法です。この方法のメリットはなんといっても簡単な点に尽きます。前述した留学の方法は社会人にとってはハードルが高いですし、直接雇用の方法もアメリカの会社の面接を突破し、ビザの問題もクリアしなければならないのでハードルが高いです。それよりは、日本で働いて仕事の実績を武器に移籍する方がずっと簡単ですし、社内移籍ではLビザ・Eビザ等を使用できます。
一方デメリットは、実現が運まかせなことです。どんなに仕事の実力があっても、その時の会社の方針や状況により移れないことがあります。著者は運良く入社後数年で駐在のチャンスをもらえたそうです。「アメリカで働けるといいなと思っているけど、日本でずっと働くのもそんなに悪くない」と思っている人は向いている方法だと書いていました。

その他の方法

他にも、抽選による永住権の取得アメリカ人との結婚による永住権の取得アメリカで生まれたことによる市民権の取得などのパターンもあるのですが、上記で紹介した方法が海外で働く現実的な路線だと思います。どの方法もトレードオフで本人の人生の選択によることが分かりました。ただ、この本を読んで色々と海外就職について調べていたらEビザを使った方法で、かつ私が知らなかった方法で海外就職した方がいたので紹介しておきます。

taiyakijp.com

エンジニアの面接

この本では、面接に関することについてかなり詳細に記載されています。著者が面接官としての経験から、面接前・面接中・面接後のさまざまなフェーズで気をつけるべきことを記しています。例としては、面接前のリクルータとのチャットにおいて、「希望給与額を言ってはいけないらしいです。これは将来の給料交渉が非常に難しくなるからです。「仕事の内容を詳しく理解したうえで考えたい」などと言っておけば大丈夫です。何も知らないとつい言ってしまいそうで、損をする可能性もありそうですね。
また、アメリカの面接も日本と同様で、応募する側も面接官を見極めるスタンスは一緒です。面接の最後では、たいていこちら側に質問があるか聞かれます。ここでする質問は自分の就職の軸や会社に求めることによって変わると思うのですが、本で紹介されていた1つの質問が日本では考えられないなと思ったので紹介しておきます。それは、「ほかにもいい会社はたくさんありますが、なぜ私はこの会社を選ぶべきなのでしょうか」です。日本では通常会社側がする質問ですが、アメリカの面接では応募する側がするのですね。この質問の背景には別のコンテキストがあるのかもしれませんが、日本の面接ではまずしない質問で驚きました。
さらに著者はソフトウェアエンジニアなので、面接で実施されるホワイトボードコーディングについても詳細に記されていました。ソフトウェアエンジニアの方は読んでみるとよいかもしれません。

人の流動性や解雇について

シリコンバレーでの1つの会社の平均勤続年数は2〜3年で、転職を繰り返しキャリアアップをするのが普通です。人の流動性が高く、みな「良い環境」「良い給料」「良い仕事内容」などさまざまな理由で転職します。そしてたいていの会社は、一度面接が失敗しても、半年から1年経てば再チャレンジを認めており、会社側も人を受け入れる体制があります。この本の第6章では、シリコンバレーでエンジニアキャリアを歩むために必要な知識や気をつけるべきことがまとめられていました。それらの中には日本でエンジニアキャリアを歩む人にもためになる内容もあります。例えば以下のような内容です。

  • 「できること」よりも「やりたいこと」
  • 転職のタイミングは自分よりも周りの状況がカギ
  • 迷ったら難しいポジションを選ぶ
  • 仕事の内容も環境も大事
  • 大企業とスタートアップでできること・できないこと
  • 日本人として働くことのメリット・デメリット
  • マネジメント系と技術系のキャリアトラックがある

日本のWeb系企業に勤めている私からみると、シリコンバレーにはエンジニアとして働く環境が整っていると感じざるを得ませんでした。ただ実際に働いていないので、働く環境なら日本のWeb系企業もあまりひけを取らないなという印象もいだきました。

人の流動性が高いというのは、自分の望み通りの転職ができるというわけではありません。会社に解雇されることも十分にあります。
解雇には大きく2種類あって、悪い解雇の「ファイア」と、必ずしも悪いとは言えない「レイオフ」があります。基本的にファイアは、違法行為や社内規則違反など「従業員側に非があった場合の解雇」です。ただし、パフォーマンス不足もファイア扱いになってしまうそうです。ファイア扱いになってしまうと次の転職活動が大変になるので、パフォーマンス不足の場合は自主退職という形で辞めさせてくれる会社もあるそうです。
一方、レイオフ「会社に原因がある場合の解雇」です。これは経済状況悪化や事業方針の転換などさまざまな理由で起こり得ます。またファイアとは違ってある日突然レイオフされることも特徴です。著者もレイオフにあったことがあるので、レイオフへの対策はたくさん書かれていました。ここはとても生々しいというかリアルな話なのでぜひ読んでみて欲しいです。

まとめ

  • 「エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢」を読んだ
  • 実際にシリコンバレーで日本人エンジニアとして10年以上も働いている人が書いた本なので、内容がとても細かくて状況をイメージしやすかった
  • シリコンバレーでエンジニアとして働いてみたいとうっすらとでも思っている人には一読してほしい本でした